久しぶりに登山の血が騒いだ2006/04/01 21:46

夢枕獏『神々の山嶺』集英社文庫

夢枕獏の書生を初めて読んだ。
また、久しぶりの山岳小説だった。

面白く、一気に物語りに引き込まれていった。
孤高のクライマーが前人未到の記録を打ち立てていく。

最後に、エベレスト南西壁冬季単独無酸素に挑戦していく。
そこに、マロリーの初登頂の謎が絡みわくわくどきどきしながら展開していく。

8000mの高所で展開していく物語にただただ引き込まれるだけだった。

とても楽しい本だった。

戦後の海外移住2006/04/05 19:19

職場のメルマガに連載している記事の第5弾です。
シリーズ「多文化共生と日系人」
    ~第5回 戦後復興と海外移住再び~
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さて、今回は戦後復興と海外移住者のつながりをお伝えします。

 日本が敗戦から復興の道を進むに当たり、中南米を始めとする海外日系人からの支援があったことをご存知でしょうか?

 日本は復興に当たり、国際社会から、「ララ物資」の供与を受けました。
 ララ物資とはLARA(Licensed Agencies for Relief of Asia:公認アジア救済連盟)から送られた物資のことを言います。

 戦後、日本を救済するために、アメリカはもとより、カナダ、中南米の各地から集まった資金や物資を一括し対日救援物資として送り出す窓口として出来た組織がこのララでした。
 この「ララ」の設立と活動の影には、明治27年に盛岡市で生まれ、日米時事新聞社を創設したカリフォルニア在住の日系アメリカ人の浅野七之介氏の献身的な努力があったといいます。

 沼津でもブラジルやベネズエラなどに在住する親戚などから支援のための資金援助がありました。当時は、1米ドルが360円の時代で、沼津の人たちは非常に助かったといっています。これら海外からの資金を元に商売を始めたり、船の修理を行い漁業に復帰したり、やはり海外の日系社会からの支援が無ければ、早期の復興は難しかったようです。

 また1954年(昭和29年)に外務省の関係団体として海外協会連合会(海協連)が設立され、移住者の募集、送出や現地受入業務などを始めて「戦後移住」が開始されます。
 1963年には海協連が発展的に解消し、JICAの前身である海外移住事業団(JEMIS)が設立され海外移住送出サービスを担って行きます。

 戦前と戦後移住の大きな違いは、政府の支援機関が作られ助成金や資本金などの支援が行なわれたことにありました。
 戦後の経済復興期の移住は、従来の過剰人口の解消策や海外からの送金による外貨獲得等という考え方もありましたが、日本が復興期を経て経済発展を遂げる
 1960年代になると、移住者数は減少し、移住への考え方も変化していきます。

 JICAは1994年(平成6年)まで、海外移住者送出事業を行なっていました。
 現在は、定年退職した人たちが海外で老後を送るために海外移住をするケースが増えており、タイやフィリピンなどでは退職した日本人を積極的に受入れる政策を取っています。
 いまが、第3次の移住の波の中にあるのでしょうか。

幕末の武士たち。2006/04/05 22:45

浅田次郎『五郎治殿御始末』中公文庫

幕末から明治に突入した日本。
その中で、最後の侍たちの生き様を書いた本。

ほろりと切なく、しかしどこかすがすがしい侍たち。

涙こそしなかったが、ほのぼのとした短編集だった。

【短編】
椿寺まで
箱館証文
西を向く侍
遠い砲音
柘榴坂の仇討
五郎治殿御始末

個人的には、椿寺までと柘榴坂仇討が好きだった。

地図の奥深さ2006/04/06 22:50

田代博『知って楽しい地図の話』新日本出版

地図にまつわる色々な話が出ている。
登山地図のみならず、メルカトルや色々な図法の使い方、地図の書き方、ネットでの地図の活用法などなど。

これから登山を続ける上でも有益な情報がたくさん詰まっていた。

そこそこ楽しめる話がたくさん書かれている。

登山者にお勧めの一冊かな。

革命家カストロ2006/04/21 00:15

佐々木譲『冒険者カストロ』集英社文庫

初めてカストロの半生を読んだ。
ゲバラより面白い。
どのような生い立ちを経て現在の位置に登り詰めたのか、いかに革命に傾倒していくのか。どのようにゲリラ部隊を率いたのか、知らないことばかりだった。

また、アメリカとの緊張が高まった「キューバ危機」について、キューバの、カストロの視点から描かれており違った視点で見ることができる。

さらにカストロについて知りたくなる、そんな一冊だった。

銛一三郎、再び2006/04/23 19:40

C.W.ニコル『遭敵海域』文春文庫

鯨取りの物語、『勇魚』で活躍した甚助の3男、三郎が帝国海軍で活躍する『盟約』に続く物語。

日本海海戦を経て時代はいよいよ第一次世界大戦に入っていく。
今回は、1冊で物語が終わってしまうがいたるところに知らなかった逸話がたくさん含まれている。
当時の日本とイギリスの関係が非常に良くわかる。

一方で、次から次に展開する物語と三郎の活躍に心躍る楽しい小説だ。

単行本では次の作が出版されている。
直ぐに『特務艦隊』を読んでみたい。

僕らの将来と地域自治2006/04/27 11:30

穂坂邦夫『市町村崩壊-破壊と再生のシナリオ』スパイス

埼玉県志木市長を勤めた著者が、現在の地方行政の現実を踏まえ、近い将来に起こるべき、地方公共団体の破産から再生までの道のりを描いた本。

類似した書籍は以前にも読んだ事があり、特段の目新しさは感じなかった。
以前この書評にも書いた三重県知事選挙に出馬した村尾信尚の著『「行政」を変える!』の方が、より他国の制度との比較等で分かりやすかった。

今回の著書は、どちらかというと小説に近い感じであり、具体的根拠や手法が理解しにくかった。

情報で生き抜くには。2006/04/29 11:36

ロバート・ベア(佐々田雅子訳)『CIAは何をしていた?』新潮文庫

本書は元CIA工作管理官が記したCIA告発の書であるが、海外で活動するものにとって、どのように情報収集のためのネットワークを構築していくのか、また、情報の断片をどのように組み合わせて全体像に結び付けていくのかが垣間見られる面白い本であった。

特に、中東地域の情報収集のためにドイツや中央アジアなどちょっと気づかない場所での活動が大きな成果を得るあたりは、大局的なしてんから仕事に取り組む必要があることを示唆している。

外務省のラスプーチン佐藤優の著書には及ばないが外交分野で活躍する人は一読をお奨めする。
我が国外務省にも是非読んで頂き、この国の情報収集体制や能力について考えて欲しい。