青春群像は群青色2010/04/01 22:47

佐瀬稔『喪われた岩壁-第2次RCCの青春群像-』中公文庫

佐瀬の本で、森田勝を取り上げた『狼は帰らず』、長谷川恒夫『虚空の登攀者』、山田昇の『ヒマラヤを駆け抜けた男』の3冊が同じく、中公文庫から出ている。
本書は青春群像として、第二次RCCの設立にかかわった男達が取り上げられている。

いつ死ぬかもわからない戦争の合間に、岩壁に命をぶつける男たち。
岩登りに新たな風を吹き込んでゆく。
そして、第二次RCCとしての集結。
戦後のクライミング史が実在の人物を通して綴られてゆく。

今では当たり前になっている岩のグレーディングやボルトなどの歴史もわかる。
クライマー一読の書です。

個々のクライマーを取り上げた本よりも本書の方が個人的には楽しかった。

垂直には挑めない・・・2010/04/03 22:18

吉尾弘『垂直に挑む』中公文庫

戦後の名クライマー吉尾弘の華々しい登攀記録。

特に、アルピニズムの追求を目指して登っていた男達の生き様が凄い。
また、著書では簡単に書かれているが、日本でも屈指の難ルートを厳冬期にチャレンジしていく姿がすごい。

学生時代に読んでいたら、自分の山登りは大きく変わっていたのではないかと思う。

フリークライミングを始めた人、一読の書です。

一歩を越える勇気を出せるか!!2010/04/04 08:05

栗城史多『一歩を越える勇気』サンマーク出版

普通の青年が、大学3年生のときに単独で北米大陸最高峰のマッキンリーに向かうところから物語はスタートする。

マッキンリーを皮切りに、南米大陸のアコンカグア、ヒマラヤのチョ・オユー、マナスル、ダウラギリを次々と登ってゆく。

162cm、60kgの普通の青年の苦悩と挑戦が綴られてゆく。

『成功の反対は何もしないこと』、失敗を恐れず踏み出す一歩が大切だ。
野口も栗城も、一歩を踏み出す勇気と行動力があるからこそ、普通の人と違うのだと思う。

山靴の音は聞こえるか!?2010/04/10 13:51

芳野満彦『新編 山靴の音』中公文庫

新田次郎の『栄光の岩壁』のモデルとなった芳野氏の本。
八ヶ岳の遭難から、その後の岩壁への挑戦が綴られている。

第2次RCCにかかわった人々も登場します。

やはり、60年代は凄い時代だと思う。

氏の頑張りには敬服するのみです。

山登りのお作法とは!?2010/04/11 21:19

岩崎元郎『山登りの作法』ソフトバンク新書

無名山塾の塾長で、NHKでも登山学の講師を務めた岩崎さんの一冊。
道具の選び方から、山での歩き方、楽しみ方まで幅広く、お作法を教えてもらえます。

これから登山を始めたい人、なんとなく始めたけど不安な人にお薦めの一冊です。

初登攀ルートは残っているか。2010/04/24 08:10

松本竜雄『初登攀行』中公文庫

講談社文庫の一連の山岳シリーズで同時代の人々の活躍とクロスしていくのが面白い。『喪われた岩壁』などと一緒に読んでいくとさらに楽しさは倍増する。

日本の登山史を描いてきた人達だが、それぞれの視点や登山に対する考えが違うのがわかる。

松本さんも数々の岩ルートの初登攀を成し遂げてきた。
装備や登りかたはいまでは、すっかり変わっているかと思うが、初めてボルトが登場したとき、その使用に躊躇する姿は、現在のフリークライミングにつながっているのだと思う。

いまの、登山客ブームとは違う山男達の登山全盛時代の姿勢がものすごく印象的だ。

こんな時代に生きてみたかった。

山を考える、山の社会学2010/04/24 08:58

菊池俊朗『山の社会学』文春新書

40年以上の登山経験を元に綴られた山岳エッセー。

山小屋のお話から、環境保護、眺めの良い絶景ポイントの紹介などいろいろなことが綴られている。
100名山以外にも、こんな楽しみがあるのだと教えてくれる一冊です。

登山は、いつまでもいろいろな楽しみ方ができる余暇だ。
それぞれの視点で楽しみ方を広げて行きたい。
また、登山を通して環境問題や行政などいろいろなことを考えることにつながっていく。
そんなきっかけになる一冊です。

生き残る技術、俺は生き残れるか!?2010/04/25 20:53

小西浩文『生き残る技術-無酸素登頂トップクライマーの限界を超える極意-』講談社+α新書

無酸素で8,000m14座登頂を目指す登山家小西さんが、登山の経験からビジネス・マネージメントを指南する一冊。

心をいかにコントロールするかが、生死を賭ける瞬間には大切だと説く。
限界を超えるために、自己はどうあるべきか、いかにチームを作るか、リーダーシップはどう発揮するべきか。

納得できる部分と、できない部分がありますが、登山を続けていてみて人生に通じるところは多々あると思います。

今の仕事に悩んでいる方、読んでみてはいかがでしょうか。

みんな山が大好きだった。2010/04/29 06:35

山際淳司『みんな山が大好きだった』中公文庫

加藤保男、森田勝、長谷川恒男、松濤明など日本の登山史に残るクライマー達、フランス生まれのアルピニスト、ロジェ・デュプラ、オーストリアのヘルマン・ブールの登山を通した生き方を解説してゆく。

処女峰が残っていた時代。より困難なルートの開拓期。
そんな時代を生き抜いた登山家達の人生観が見えてくる。

山を愛し、散っていった男達を通して、現代の登山への警鐘も鳴らしている。

百名山を目指している人にお薦めの一冊です。