北壁からのメッセージ2011/02/24 22:43

長谷川恒男『北壁からのメッセージ』中公文庫

長谷川恒男の小学時代から定時制高校までの生活とその後の、子供達の教育に至る経緯を書いた一冊。

いまでは野口健も同じような本を出しているが、長谷川が最初だろう。
ジュニア・アルピニスト・スクールを通しての子供達の教育は、現在の環境教育、体験教育につながるものだ。
生きていれば私の父と同じ歳。
もっと活躍する姿が見たかった。

エベレストの虹2011/02/22 22:10

谷恒生『エベレストの虹』角川文庫

加藤保男を思わせる、主人公、日本登山界のエース風間剣策。これまで2度、エベレストに登頂し、厳冬期単独登山に望む。
エベレスト出発前に、女優との対談をへてロマンスが芽生える。登山に望む風間と、風間を思いながら映画撮影に望む女優。
長編アドベンチャー・ロマンとのことだが、今ひとつです。
登山描写も筋も、もう少し深みが欲しいところです。

黄色い牙2011/02/22 21:45

志茂田景樹『黄色い牙』講談社文庫

志茂田景樹の本を初めて読んだ。
学生の頃、凄く過激なファッションでテレビに出ていたオッサン程度にしか思っていなかった。
本作はマタギの伝統をかたくなに守り抜く佐藤継憲を主人公として、そのまたぎの里である露留を舞台に展開していく。
幼かった主人公の成長がとても逞しい。マタギの衰退していく様子が悲しい。
マタギ小説としてはなかなかの一冊です。

飢えて狼。2011/02/06 21:11

志水辰夫『飢えて狼』新潮文庫

久しぶりに、面白いハードボイルドに出会った。

主人公の渋谷は、マッターホルン北壁の単独登攀を行うなど一流のクライマーだった。
今は、引退してマリーナを経営している。
突然の訪問者により、壮大な事件に巻き込まれてゆく。

一気に読み進んでしますとても面白い小説だ。
これが、著者の処女作というから凄い。
もっと、志水辰夫を読んでみたくなる。

遥かなる未踏峰は何処に!!2011/02/04 22:35

ジェフリー・アーチャー『遥かなる未踏峰-上下』新潮文庫

永遠の謎、ジョージ・マロリーは未踏峰のエベレストに登頂したのか。

本書はマロリーを主人公とした英国登山隊のエベレスト初登攀を巡る物語。
奥さんルースとの手紙のやり取りがとても良い。
また、ルースがスコット未亡人へ夫のエベレスト行きを相談する。スコット未亡人の回答は、自分の妻にも読んで欲しい。

山岳描写はイマイチですが、古き良き英国とその時代の登山は面白いです。

ヤマトホウリツ2011/01/31 22:09

横手康史『登山の法律学』東京新聞出版局

遭難や事故、引率登山やリーダーの役割など様々なケースにおいて、法的な責任や倍賞責任がどうなるのかを解説した書。

最近は、『連れて行ってもらう』という意識が高い中、多くの登山者に本書を読んで、自己判断、自己責任を考えて欲しいと思います。

特務艦隊、恐るべし日本海軍魂2011/01/27 21:52

C・Wニコル『特務艦隊』文春文庫

銛一三郎シリーズ三部作の最終編

今回も銛一が大活躍する。
これまでのシリーズ同様に日英同盟を軸とした男達の友情がまた素晴しい。
この時代の日本人ってどうしてこうも光っているのか。
世界に誇れる日本人がいた時代だ。
開国して間が無いのに本当の国際人達だった。

銛一甚助も健在で、ちょくちょく名前がでてくる。
甚助の『勇魚』から、『盟約』『遭敵海域』『特務艦隊』ともう一度、全てを通して読んでみたくなる。

ニコルさんの次の作品にも期待したい。

山の軍曹、鬼軍曹2011/01/23 10:05

木下寿男『山の軍曹カールを駆ける』山と渓谷社

木曽山脈の千畳敷で半生を過ごしてきた木下さんの記録。

小屋を建てるに至った経緯、ロープウェイができるまでの苦労、そして何より、観光地となってしまった千畳敷での遭難対策や、無謀登山者の実態などが率直に述べられている。

山をやる人は、是非、自分がそんな登山者になっていないか確認してみる必要があるのでは。

クライマー2011/01/22 09:24

高野亮『クライマー』随想舎

天才クライマー吉尾弘の半生を追った本。

この時代の初登攀争いなどの中で、どのようにアルピニズムを追いかけてきたのかが良くわかる。
また、その後の登山の発展への尽力など、同時代のクライマーの中でも吉尾は一頭地抜き出ている。

面白い一冊です。

氷結果汁の森2011/01/21 23:08

熊谷達也『氷結の森』集英社文庫

熊谷達也の「森」シリーズの「マタギ」三部作の最終巻。
これまでの『邂逅の森』や『相克の森』も良かったですが、本書もとても良い。

主人公の矢一郎の性格が清々しい。
樺太の自然と彼を取り巻く人物達が魅力的だ。

熊谷達也、恐るべし。